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私が岸を離れる日 第一話:履き潰したこの靴で。
それは、ふっ とした瞬間の出来事。

まるで予期せぬ事態に陥った、焦りにまみれた人間のよう。



知らないうちに、一歩違う線を踏んでいたのかもしれない















「? ここ、どこよ」



今日は快晴。明日も快晴。

梅雨前線は、遥か遠くへ去っていった。

残るは緑の生い茂った 潮の匂いがする時期だと思っていたのに。



長くいい夢を見ていたにも拘らず


目覚めはほどなくして最悪と成り下がった。





「…こんな時期に桜?」




緑が一向に見えず 絶えず見えるのは 薄ピンク色の雲。


はたまたは、雨。




さわっ と風がひとつ 抜けた  その瞬間






「……、?」






一人の男が何かの魔力にとらわれて


ここへ誘導されてきたような足取りで現れた。






ここからでは少し 遠く、(しかし見覚えがあるのはなぜだろうか)






ピンク色の雨が フワリと激しくうなった。







「・・・あ」







男は風の音で気づいたのか、こちらへと顔を向ける。







左頬にある十字の傷が 異様に目がついた。









(だれ…?)





私は、なぜか気になった。


いつの間にか、この状況の厳しさを忘れていたに違いない。






そして男は、こういった。











「……巴…、?」












それは 後の私にとって 一番の厄介ごとになっていた。







*プチトリップ小説 しかも剣心だし。
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泣きたいかもしれないし笑いたいかもしれない。
「九郎さん」

「……」



夜風が吹き抜ける、海の上。

暗い闇が空を支配しても明るい月は私たちを残酷に照らしていた。

ゆらりと行く平家の亡命船。

そこに乗るのは、本来平家と敵対していた

龍神の神子と源氏の仲間だった。



「九郎さん…」



もう一度、さびしくかなしい彼の背中へと呼びかけるが

なにもなかった。




彼は源氏の名代、源九郎義経。

その肩書きを知らないものはもはや誰もいない。



血を血で洗い、涙を捨てて

兄のために、源氏の世を創る為に

人を殺し続け 手に入れたものは





恐ろしい程のさびしさ むなしさだけが残った 過去の栄光。






(こんなの、絶対に許されることじゃないよ…)




声にならない胸の奥の叫びは

頭の中に響き渡り、体を駆け巡るだけで

終わってしまった。



代わりに出たものは






「私がいます」






なんと なさけなく たよりない あかごのような ことばだろうか。







「私が、そばにいます」







それでも、足掻いてしまうのは 人間だから。


その証拠が一ミリでも欲しかった。









「ずっとずっと…います」










そんなさびしそうな背中を見せないで…


これじゃあみんなに合わせる顔が無いじゃない


なんて言い訳をしようか?





闇に飲まれて、言葉の一部が失われた。












「…、っ 望美……、」











枯れ果てたその愛しい声で 「望美」と呼んで。


必要として。





そして今度はぎゅっと抱きしめさせて。






月と太陽に、誰が譲るものですか。
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