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私が岸を離れる日 第二話:木の下影を宿として

「剣心。どうしたの、その子!!」



「いや、これは…その、深い訳があって…!」

















『…、巴?』




そう、彼が私に向かって呟いたのが


もしかしたら、始まりだったのかもしれない。






あの後、当然のごとく知り合って


勿論服装についても聴かれた。





『お主はどこかの良家のお嬢さんでござるか?』






その言葉に対して「違う」と否定して


事情を言ってみた。






そう、だってどうせ 信じてくれるわけが無かったから。






空には桜が揺れていた。









不振人物なのにも関わらず、




『行く当てが無いのなら、拙者の世話になっている道場へくるでござるよ』




当然のごとくいってのけたあなたに



( なぜそんなふうに言えるの ) と。









でも、嬉しかったから 今はそれに甘んじよう。


一人でいるより、誰かが居たほうが






きっと疲れずにすむんだろう…






























「…と、いうわけなんでござるよ」



「つまり天涯孤独の身の上に、遊郭から脱走したってワケ?

それで道で迷ってる彼女を見つけた剣心が連れて来た…と?」





これはでっちあげ。


だって未来から来たなんて、誰にでも話していい内容ではないからだ。






天蓋孤独の身っていうのもうそ。


遊郭の脱走ってのもうそ。


確かに道に迷ってたけど、少し事情が違う。





私はこの十字傷の男に頼るしかなかったのだ。


だって私、まだ名前を…言っていない……






何度も何度も、名前を言おうと思うのだけれど、



どうしてかしら。








言ってはいけないような気がした。





( だって十字傷さんったら、私のこと見て悲しいかおをするんだもん )



理由を聞いたら、野暮だって あなたは怒る??







……、今思えば どうして私、十字傷さんのことで 頭がいっぱいなんだろう…?











初対面の癖して、ぜんぜんそんな雰囲気ではなく。





どこか、生き別れた その先にたどり着いたような





どちらかが、置いて行かれた…悲しみがあるような





まっしろで、うす桃色の思い出のような

















( そんな出来事あるわけないのにね )






どこかで出会っている…ような気、がした。
















「理由が理由なんだし、仕方ないわよ。しばらくここに居てもいいから!

ここを自分の家だと思って使ってね?」





活発な少女の微笑みに気後れするも


私も負けじと、挨拶を。






「本当に、ありがとうございます。…お世話になります。」



「お、そうだった…拙者、おぬしの名前を聞きそびれたでござるよ…」






名は、なんと?











「……、雪代円…です」














赤い彼の空気が、凍りついた気がした。





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私が岸を離れる日 第一話:履き潰したこの靴で。
それは、ふっ とした瞬間の出来事。

まるで予期せぬ事態に陥った、焦りにまみれた人間のよう。



知らないうちに、一歩違う線を踏んでいたのかもしれない















「? ここ、どこよ」



今日は快晴。明日も快晴。

梅雨前線は、遥か遠くへ去っていった。

残るは緑の生い茂った 潮の匂いがする時期だと思っていたのに。



長くいい夢を見ていたにも拘らず


目覚めはほどなくして最悪と成り下がった。





「…こんな時期に桜?」




緑が一向に見えず 絶えず見えるのは 薄ピンク色の雲。


はたまたは、雨。




さわっ と風がひとつ 抜けた  その瞬間






「……、?」






一人の男が何かの魔力にとらわれて


ここへ誘導されてきたような足取りで現れた。






ここからでは少し 遠く、(しかし見覚えがあるのはなぜだろうか)






ピンク色の雨が フワリと激しくうなった。







「・・・あ」







男は風の音で気づいたのか、こちらへと顔を向ける。







左頬にある十字の傷が 異様に目がついた。









(だれ…?)





私は、なぜか気になった。


いつの間にか、この状況の厳しさを忘れていたに違いない。






そして男は、こういった。











「……巴…、?」












それは 後の私にとって 一番の厄介ごとになっていた。







*プチトリップ小説 しかも剣心だし。
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